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アップルパイの
くまさんのおはなし

森のにぎわいが少し落ち着いてきた頃。
くまさんはゆめの丘で今年の思い出を振り返っていました。

「苺のジャム作り、春まつり、スイカ割に花火大会、
川での水浴び、秋の収穫祭…どれもキラキラ楽しかったなあ。」

楽しかった思い出を1つ1つ思い出していたら、しあわせな気持ちに。
でもなんだかちょっぴり寂しくなってきました。

 「これからハロウィンやクリスマスだってある。
でも、静かになった森を見ていたら、あんなに賑やかだったのになって、
なんだかちょっと悲しい気持ちになってきちゃった…」

ちょっぴりせつない気持ちになったくまさん。
気を紛らわせようと読みかけの本を開きましたが、
風が冷たくなってきて、きゅっと身体を縮めた瞬間に

うとうと、夢の中…

✎𓂃  

そこはこんがりきつね色の世界。
あちこちから香ばしい香りと甘い香りが漂ってきます。

そして、地面に足を置くたびに、
サクサクと、パイ生地がほどける音がします。
落ち葉を踏みしめるような不思議な感覚です。

あたりを見回してみると、パイ生地とジャムのお花や
パイ生地の木に木の実がなっていました。

不思議な世界にくまさんはちょっぴりわくわく。
サクサクのお花を摘み取って、ひとかじり。
バターの香りが口いっぱいに広がります。

「おいしいパイを食べたらちょっと元気が出たかも。」

するとそこに頭に真っ赤なりんごをちょこんとのせた
くまさんがやってきました。

「こんにちは!もしかしてこの世界に迷い込んだのかな?大丈夫?」

アップルパイのくまさんは、やさしく語りかけます。

くまさんは、こんぺいとうの森からやってきたこと、
寂しい気持ちになって、気づいたらここにいたことを話しました。

「なるほど!じゃあお家に来るといいよ、
一緒においしいアップルパイを作ろう!」




くまさんとアップルパイのくまさんは、
丁寧にパイ生地を作り、カスタードクリームとりんごのフィリングを作って
アップルパイをオーブンに入れました。

焼き上がるまでの間、くまさんはアップルパイのくまさんに話します。

「今年もとっても楽しいことがあったし、これから楽しみなこともある。
でも、静かになった森を見ていたらなんだか寂しくなっちゃって…」

「うん、うん。確かに秋ってなんだか寂しくなっちゃうこともあるよね。
でもどんな時もほかほかのアップルパイみたいに、
なくならない温もりはすぐそこにあるはず。」

くまさんはその言葉を聞いて思い出しました。
毎日森で一緒に過ごしている仲間たち、
温かいスープやふかふかのお布団。
心の温もりもほっと一息つける温もりも…

振り返ってみると、くまさんの近くにも色んな温もりがありました。

「確かに、近くにたくさんの温かさを感じられるね。
それを思い出したら、なんだか心がぽかぽかしてきたよ。」

アップルパイのくまさんは、ホッとした顔をして、
真っ赤なハートを差し出しました。

「また寂しくなったら、このハートを握りしめて今日のことを思い出してね。」

握りしめるとほんのり温かさを感じられます。

…

パッと目を覚ますと、そこはいつものゆめの丘。
手の中には、アップルパイのくまさんからもらった
真っ赤なハートがありました。

「そうか、寂しくなったらいつでもこの温もりを思い出せばいいんだ。」

くまさんはほっと微笑むと、みんなにアップルパイを焼くために
お家に向けて元気に歩き出しました。